top of page

K-4 竹内茂夫(西日本支部)

《ワルシャワの生き残り》のヘブライ語合唱部分の発音と歌詞

 

 アルノルト・シェーンベルクが1947年に作曲した《ワルシャワの生き残り》作品46のヘブライ語男声合唱部分の歌詞は,旧約聖書申命記6章4-7節の通称「シェマの祈り」の前半部分で,約8分のうちのわずか1分ながら実演の際の発音に関しては様々なことを考慮する必要がある。出版されている Schott 版(1975)およびフィルハーモニア版(1979)と IMSLP にある Bomart 版(1949)はほぼ同一である。発音は,東欧のアシュケナズィ系の一種で書かれており,現在のイスラエル共和国が採用している南欧のスファラディ(セファルディ)系の発音とは様々な点で異なる。そのため,実演ではそのどちらの発音かまたは独自の発音を記した楽譜で歌われている例も見られるが,出版譜そのものに歌詞の音節と音符の数が合わない箇所が見られたり,音価の間違いがあるなど演奏以前に解決しないといけない問題が存在するようである。しかしながら,シェーンベルクの自筆スケッチ(1947/2014)を見ると,発音の表記が大きく違うだけでなく音節と歌詞は合っている一方で,歌詞の数箇所に音符が付けられていない,リズムが異なっている、ヘブライ語聖書(Biblia Hebraica Stuttgartensia)に記されているアクセントと強拍と思われる部分が合っていない、などが見られる。発表者は,2018年12月に下野竜也指揮による京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」において,京響コーラスのためのヘブライ語の指導および団員に渡す資料と音源作成,プログラムの対訳,字幕作成に携わった。そこでは,東欧のアシュケナズィ系の発音を採用し,出版譜だけでなく自筆スケッチも参照しながら指導をして対訳を作成した。それらの解決策を具体的に示したい。

bottom of page