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F-4 原 塁(西日本支部)

武満徹の1950年代の創作における「愛」について
──シュルレアリスム及びアヴァンギャルド芸術との関わりから──

 

 戦後間もない激動の1950年代にあって、武満徹の創作はめまぐるしい変化をみせた。「新作曲派協会」への加入と脱退、瀧口修造との出会いと「実験工房」での活動、オリヴィエ・メシアンからの決定的な影響と12音技法の探求、そして器楽と並行した「ミュジック・コンクレート」の創作といったように、この時期の武満の創作は一見するとまとまりを欠いており、先行研究においても、これらの活動を一貫した筋立てのもとで結びつける有効な視点は提示されていない。

 本発表は、同時期の武満の著作に頻出する「愛」という概念を足掛かりに、作曲家の一貫した問題意識を浮彫にすることを試みる。たびたび指摘される通り、この概念はシュルレアリストの詩人、ピエール・ルヴェルディのテクストに拠るが、その内実は十分に検討されていない。発表者は50年代前半の武満のテクストを読解し、このシュルレアリスム由来の概念が「外部」と「内部」、「現実」と「精神」、「合理」と「非合理」といった二項の交通に基づく作品生成の行為であることを指摘するとともに、この図式が花田清輝や岡本太郎ら同時代のアヴァンギャルド芸術の理想と親和性を持つことを明らかにする。その上で、50年代後半へと考察を進め、二項の交通という課題のその後の展開を「ミュジック・コンクレート」と「器楽」という二つの領域のうちに見定める。とくに器楽の領域において「愛」の概念は、一方では「音の河」という良く知られた武満の思想に姿を変え、他方では「西洋」(「合理」)と「東洋」(「非合理」)とをひとつの楽曲内で対立させる、やはり人口に膾炙した武満の創作観へと結実することになる。

 以上のように、本発表は1950年代の武満徹の創作について、シュルレアリスムと同時代のアヴァンギャルド芸術を念頭に置きながら一貫した説明を与えると同時に、のちに作曲家のステレオタイプとなった創作観の発生過程を解明するものである。

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