top of page

I-3 水野みか子(中部支部)

日本における電子音響音楽アーカイブの指針と基盤構築の研究

 電子音響音楽を対象とするアーカイブの先駆事例には、1970年ころまでの569作品を対象としスタンフォード大学とカールスルーエのZKMにリードされたIDEMA(1990-)、電子音響音楽2700作品以上を含む IRCAM のB.R.A.H.M.S.(2001-)、Ina-GRMのAcousmathèque、ブールジュ電子音響音楽国際研究所からフランス国立図書館 BnF へ移管(2006-)された Synthèse(1999-)、用語翻訳やシソーラスを充実させた国際的な研究者グループによる EARS(2001-)などがあり、それぞれの指針に沿って作品・作曲家の対象範囲やメタデータが設定されている。

 本発表では、日本電子音楽協会を中心に進めている電子音響音楽アーカイブ・プロジェクトについて報告する。このプロジェクトは、文化庁の「デジタルアーカイブの構築・共有・活用ガイドライン」に沿った形で保存、修復、調査等を進めるものであり、200作品という対象作品数は決して多くはないものの、電子音響音楽特有の二つの拡大作業を行うことに特徴がある。すなわち、第一に、作品再演を想定したレストレーションと上演仕様書の作成であり、第二に、作品提示形態の分類と名称の検討である。

 レストレーションでは音響修復に加え、ライヴ・エレクトロニクスに関するデバイス、OS、アプリケーション等、種々レベルで技術的アップデートを行い、上演仕様を更新する。本プロジェクトでは、初演時の音楽コンセプトと上演時の口頭的伝達・調整の事項を確認し、初演時の制作者(しばしば作曲者)またはデジタル音楽修復の専門技能者によってシステムを再構築する。作品提示形態については、保存・公開を目的とする BnF との比較や創作支援・記録のプラットフォームを提供する国際コンピュータ音楽会議 ICMC の議論を踏まえて、日本の事例に最適なカテゴリーを導き出す。

bottom of page